木村 光久(きむら みつひさ、1930年 京都市 - 1996年9月10日 京都市)は、日本の漫画家。のちに剪紙作家となり木村 祥刀(きむら しょうとう)を名乗る。本名:木村 祥一(きむら しょういち)、漫画家としてのペンネームはほかに木村 ただし(きむら ただし)、京 さゆり(きょう さゆり)などがあり、近年再評価の気運にある劇画作家木村 仁(きむら じん)と同一人物である。

筆名

以下に筆名を整理する。

来歴・人物

画家・漫画家として

1930年(昭和5年)、京都市東山区五条坂に生まれる。祖父は陶芸家6代目木村清山(木村仙之助)、父は同7代目木村清山であり歌人の木村二瓶子、母は華道家であり茶道家の木村宗良、同志社大学教授の稲本健二は従弟、映画プロデューサーでエッセイストの木村立哉は甥である。挿絵画家の江川みさおは義姉にあたる。

京都市立美術工芸学校(現在の京都市立銅駝美術工芸高等学校)から、「飛び級」で通常よりも1年早く、京都市立美術専門学校(現在の京都市立芸術大学)に入学する。幼少から陶芸に才能を発揮したが、陶芸家の道へは進まずに上京し、岩田専太郎、長崎抜天に師事する。初期にはおもに小説の挿絵などを発表した。

1950年代から、木村 光久として、少女マンガや少年マンガを発表、同時期に京都から上京した漫画家の吉田竜夫、辻なおきらとの親交は深かった。1959年(昭和34年)に集英社に入社した、佐治輝久(のちの『ぶ〜け』創刊編集長)が同年初めて担当した作家が木村であり、木村は「少女ブック」で佐治担当のもと『まつばちゃん』(1959年)を発表している。1960年(昭和35年)、挿絵画家・江川みさおの実妹・岡田静江と結婚する。1963年(昭和38年)に「週刊少年マガジン」(講談社)に発表した『風雲からす』は、吉田の起こした「竜の子プロ」が「構成」にクレジットされている。「ボーイズライフ」(小学館)に発表した『マット・ヘルム・シリーズ』(原作ドナルド・ハミルトン、1968年 - 1969年)に「木村 仁」と署名している。

剪紙作家として

1973年(昭和48年)、劇画を発表する傍ら、中国の民間芸術「剪紙」に触れ、その手法を学び、1982年(昭和57年)には、木村 祥刀名義で国鉄京都駅(現在のJR京都駅)の「京都駅ギャラリー」で剪紙「能」画個展を開く。同年、「京都府主催工芸産業技術展」に『文楽』が入選を果たす。1989年(平成元年)には、京都国際ホテル(藤田観光)の「京都国際ホテルギャラリー」で個展を開催するほか、個展を数回開く。

1994年(平成6年)10月から、「京都新聞」紙で『昭和ひとけた京育ち』を週3回、約1年間にわたる連載を開始する。翌1995年(平成7年)4月、同市北区の「関西電力ミュージアム」で、88作を選んだ作品展『京都発!昭和ひとけた子供の時代』を開催する。同年8月9日付作品『防空壕』では、1945年(昭和20年)1月16日の京都空襲(馬町空襲)について言及しており、同作をもって『昭和ひとけた京育ち』全110回の連載を終了している。

1996年(平成8年)9月10日、『京の子供の遊び唄』シリーズの制作の途上、死去する。66歳没。

没後

一周忌にあたる1997年(平成9年)8月、京都市中京区姉小路通での「姉小路行灯会」(「姉小路界隈を考える会」主催)において、会場におけるライトアップ、ならびに行灯に剪紙作品が使用され、同年以降継続する。

没後7年を迎えた2003年(平成15年)4月21日 - 同年6月7日、時代劇専門チャンネルが放送した『朗読 鬼平犯科帳』第三話『血頭の丹兵衛』(全7回)において、野間脩平アナウンサーによる朗読のバックに剪紙作品が使用される。同年8月、「プラッツ近鉄」京都店で、未発表作であった『京の子供の遊び唄』シリーズを含む原画展が開催された。同年には、木村光志名義で1960年代に東京漫画出版社で描いた『踏まれても』が、唐沢俊一らの東京文化研究所が復刻したアンソロジー『踏まれても 全日本少女不幸選手権』(UA!ライブラリー13・貸本漫画復刻)に収録される。

2010年(平成22年)2月24日、男前豆腐店が発売した「やさしくとろけるケンちゃん」のパッケージのキャラクターに、『昭和ひとけた京育ち』シリーズの『豆腐屋さん』が採用された。

没後15年を迎えた2011年(平成22年)10月21日 - 同年12月4日には、京都市東山区の高台寺・北書院、および圓徳院で、秋の特別展「木村祥刀 切り絵の世界『昭和ひとけた京育ち』」として、同シリーズ全作品が展示された。同年10月22日には、京都でホームムービーの日(「ホームムービーの日in京都」)が行われ、木村がかつて撮影した8mmフィルム作品を世話人・柴田幹太や野村雅夫らが調査・発掘し、当日上映された。かつて1974年(昭和49年)5月12日に木村が、シングル8で撮影した短篇フィルム作品『日吉っさんのお祭り』が、「第9回ホームムービーの日 今年の一本」に選定された。

作品

1950年代

  • 『西瓜と少年』、文高橋与一、芳文社「痛快ブック」、1950年代 - 挿画
  • 『星かがやけり』、文藤口透吾、芳文社「痛快ブック」、1950年代 - 挿画
  • 『雪の高原よさようなら』、文藤口透吾、芳文社「痛快ブック」、1950年代 - 挿画
  • 『うずまくダイヤ』、光文社「少女」、1955年 - 絵物語
  • 『父さんはいきている』、光文社「少女」、1950年代
  • 『あした咲く花』、文長谷川幸延、光文社「少女」2月号、1955年 - 絵物語
  • 『黒いキツネ』、光文社「少女」、1956年 - 絵物語
  • 『はしる東京』、光文社「少女」夏休みの増刊号、1956年
  • 『お力ちゃん』、光文社「少女」別冊付録、1956年
  • 『おとうさんあぶない』、文高木純行、光文社「少女」新年号、1957年 - 絵物語
  • 『あと5分!』、文小山勝清、光文社「少女」正月増刊号、1957年 - 絵物語
  • 『不良少女はるみ』、光文社「少女」新年号 - 2月号、1957年
  • 『すずをならす子』、文島守俊夫、光文社「少女」、1957年 - 絵物語
  • 『小鳩よなぜなくの』、集英社「少女ブック」夏の増刊号、1957年
  • 『たそがれの悲曲』、作大鹿ひでお、中村書店「ナカムラマンガシリーズ」、1957年 - 表紙画のみ
  • 『かなしき白鳥』、きむら光久名義、集英社「少女ブック」連載、1957年 - 1958年
  • 『白雪日記』、集英社「少女ブック」、1950年代
  • 『ふたりのねがい』、集英社「少女ブック」、1958年 - 1959年
    • 単行本 : 集英社少女漫画文庫13、集英社、1959年
  • 『赤いぽっくり』、集英社「少女ブック」増刊号、1958年
  • 『そよかぜの天使』、秋田書店「ひとみ」11月号、1958年
  • 『ごめんなさいおねえさん!』、集英社「少女ブック」新年増刊号、1959年
  • 『東京の山田美智子さんのほんとうにあったかなしいお話です』、光文社「少女」新年号、1959年
  • 『しあわせのちかい』、集英社「少女ブック」春の増刊号、1959年
  • 『みつばち少女』、秋田書店「ひとみ」、1959年
  • 『まつばちゃん』、集英社「少女ブック」、1959年

1960年代

  • 『花びら少女』、秋田書店「ひとみ」、1960年
  • 『なげられた小石』、光文社「少女」7月号、1960年
  • 『まゆみのやくそく』、案神之峯城、講談社、1961年
    • 「たのしい二年生」、1961年1月 - 同年3月連載
      • 別冊付録 : 講談社「たのしい二年生」2月号(第4巻第11号)、1961年2月1日発行
    • 「たのしい三年生」、1961年5月 - 同年6月連載
  • 『こんにちはチコです』、講談社「たのしい二年生」、1961年4月 - 同年10月連載
    • 別冊付録 : 講談社「たのしい二年生」9月号(第5巻第6号)、1961年9月1日発行
  • 『たんていたかちゃん』、案神之峯城、講談社「たのしい一年生」、1961年10月 - 1962年2月連載
    • 別冊付録 : 講談社「たのしい一年生」12月号(第6巻第9号)、1961年12月1日発行
  • 『町は青空』、木村ただし名義、案神之峯城、講談社「少年クラブ」1月号 - 12月号連載、1962年
    • 別冊付録 : 講談社「少年クラブ」3月号(第49巻第3号)、1962年3月1日発行
  • 『真理子のプレゼント』、きむらただし名義、集英社「りぼん」、1962年
  • 『小公女』、原作バーネット、集英社『世界名作絵物語全集』第1巻、1962年11月20日 - 絵物語
  • 『風雲からす丸』、講談社「週刊少年マガジン」、1963年
  • 『はしれ一文字』、講談社「ぼくら」6月号 - 8月号、1963年
  • 『少年航空戦記 ゼロ戦特攻隊』、講談社「ぼくら」連載、1963年 - 1964年
    • 別冊付録 : 講談社「ぼくら」12月号(第9巻第12号)、1963年12月1日発行
    • 別冊付録 : 講談社「ぼくら」1月号(第10巻第1号)、1964年1月1日発行
  • 『おてんばと舞妓はん』、京さゆり名義、東京漫画出版社「バンビ・ブック」シリーズ、1960年代
  • 『おてんば面白相』、京さゆり名義、東京漫画出版社「バンビ・ブック」シリーズ、1960年代
  • 『ボーイフレンドができちゃったぁ』、京さゆり名義、東京漫画出版社「バンビ・ブック」シリーズ、1960年代
  • 『舞妓のお姉さん』、京さゆり名義、東京漫画出版社「バンビ・ブック」シリーズ、1963年
  • 『現代っ子探偵』、京さゆり名義、東京漫画出版社「バンビ・ブック」シリーズ、1964年
  • 『おてんば大行進』、京さゆり名義、東京漫画出版社「バンビ・ブック」シリーズ、1965年
  • 『おてんばもお年ごろ』、京さゆり名義、東京漫画出版社「バンビ・ブック」シリーズ、1965年
  • 『おけらが泣いた』、木村光志名義、東京漫画出版社「現代青春ドラマ」シリーズ、1960年代
  • 『踏まれても』、木村光志名義、東京漫画出版社「現代青春ドラマ」シリーズ、1960年代 - 2003年7月復刻
  • 『キューポラのある街』、木村光志名義、原作早船ちよ、講談社「なかよし」、1966年
    • 別冊付録 : 講談社「なかよし」9月号(第12巻第11号)、1966年9月1日発行
  • 『チャームチャームトコちゃん』、木村光志名義、講談社「週刊少女フレンド」、1966年
  • 『可愛い悪魔』、東京ロマン社、1966年
  • 『幼ない獣』、東京ロマン社、1960年代後半
  • 『渚の孤独』、東京ロマン社、1966年代後半
  • 『ああ、はじめての恋』、東京ロマン社、1966年代後半
  • 『マット・ヘルム・シリーズ』、木村仁名義、原作ドナルド・ハミルトン、小学館「ボーイズライフ」連載、1968年 - 1969年
    • 『マット・ヘルム 抹殺部隊』、小学館「ボーイズライフ」11月号(第6巻第8号) - 12月号(第6巻第9号)、1968年11月 - 同年12月発行
    • 『マット・ヘルム 掠奪部隊』、小学館「ボーイズライフ」1月号(第6巻第10号) - 3月号(第6巻第12号)、1969年1月 - 同年3月発行
  • 『女族連盟』、木村仁名義、小学館「ビッグコミック」、1968年
  • 『氷点』、木村仁名義、原作三浦綾子、小学館「ジュニア文芸」1月号(第3巻第1号) - 5月号(第3巻第5号)連載、1969年
  • 『エデンの海』、木村仁名義、原作若杉慧、小学館「ジュニア文芸」6月号(第3巻第6号) - 9月号(第3巻第9号)連載、1969年
  • 『10月13日の廃坑』、木村仁名義、原作かわだこう、平凡出版「週刊平凡」第11巻第38号、1969年9月
  • 『底なし沼の悲劇』、木村仁名義、原作かわだこう、平凡出版「週刊平凡」第11巻第39号、1969年10月
  • 『ある殺人』、木村仁名義、平凡出版「週刊平凡」第11巻第41号、1969年10月
  • 『夫殺し』、木村仁名義、平凡出版「週刊平凡」第11巻第42号、1969年10月
  • 『妻の復讐』、木村仁名義、平凡出版「週刊平凡」第11巻第43号、1969年10月
  • 『怪盗リカ』、木村仁名義、平凡出版「週刊平凡」第11巻第44号、1969年11月
  • 『嫉妬狂い』、木村仁名義、平凡出版「週刊平凡」第11巻第45号、1969年11月
  • (タイトル不明)、木村仁名義、平凡出版「週刊平凡」第11巻第46号、1969年11月
  • 『毒殺』、木村仁名義、平凡出版「週刊平凡」第11巻第47号、1969年11月

1970年代

  • 『ああ初恋』、木村仁名義、小学館「ジュニア文芸」5月号(第4巻第5号)、1970年5月
  • 『カザノバ情史』、木村仁名義、『木村仁傑作集』、芸文社「漫画天国」1970年9月30日増刊、1970年9月30日発行
  • 『美智子さま愛の37年』、木村仁名義、集英社「週刊明星」第14巻第44号通巻692号、1971年10月
  • 『貴日止ぼうや』、木村仁名義、パーフェクトリバティ「PL」、1974年 - 1975年 - 御木貴日止伝記

1980年代

  • 『剪紙「能」画シリーズ』、木村祥刀名義、1982年
  • 『文楽』、木村祥刀名義、1982年 - 「京都府主催工芸産業技術展」入選

1990年代

  • 『昭和ひとけた京育ち』、木村祥刀名義、「京都新聞」、1994年 - 1995年
  • 『京の子供の遊び唄』、木村祥刀名義、1996年

フィルム

8mmフィルム作品の発掘・上映された一覧である。

  • 『下田』(シングル8、1969年撮影、2012年発掘・公開) - 静岡県下田市内
  • 『熱海』(シングル8、1969年撮影、2012年発掘・公開) - 静岡県熱海市内
  • 『奈良』(シングル8、1969年撮影、2012年発掘・公開) - 奈良県奈良市内
  • 『茅ヶ崎』(シングル8、1969年撮影、2012年発掘・公開) - 神奈川県茅ヶ崎市内
  • 『運動会』(シングル8、1973年撮影、2012年発掘・公開) - 京都市立修道小学校(廃校)
  • 『日吉っさんのお祭り』(1974年5月12日撮影、2012年発掘・公開) - 京都府京都市東山区・新日吉神宮、「第9回ホームムービーの日 今年の一本」選定(2012年)
  • 『嵐山』(シングル8、1970年代撮影、2012年発掘・公開) - 京都府京都市西京区・嵐山

書籍

  • 『ふたりのねがい』、「集英社少女漫画文庫」13、集英社、1959年
  • 『小公女』、原作バーネット、「世界名作絵物語全集」第1巻、集英社、1962年11月20日

脚注

参考文献

  • 『少女マンガの世界 1 昭和二十年-三十七年』別冊太陽、平凡社、1991年7月 ISBN 4582942393
  • 『乙女のロマンス手帖』、堀江あき子、らんぷの本、河出書房新社、2003年9月11日 ISBN 4309727328
  • 『貸本マンガRETURNS』、貸本マンガ史研究会、ポプラ社、2006年3月 ISBN 4591091910
  • 『昭和期美術展覧会出品目録 戦前篇』、東京文化財研究所、中央公論美術出版、2006年6月 ISBN 4805505230
  • 『マンガ研究 第11巻』、編集・発行日本マンガ学会、2007年3月31日 ISBN 4843323527
  • 『戦後少女マンガ史』、米沢嘉博、ちくま文庫、筑摩書房、2007年8月 ISBN 4480423583

関連事項

  • 吉田竜夫
  • 辻なおき
  • 東京漫画出版社
  • マット・ヘルム
  • ドナルド・ハミルトン
  • 男前豆腐店

外部リンク

  • 木村祥刀・切り絵の世界 - 公式ウェブサイト
  • きむら光久/木村光久 - 少女漫画研究室
  • 京さゆり - ウェイバックマシン(2019年11月1日アーカイブ分) - 「懐かしのマンガぐらふぃてぃ」
  • Kimura, Mitsuhisa - オハイオ州立大学 (英語)
  • Japanese Paper-Cut Art By Shoto Kimura - ランディ・R・ジョンソン (英語)
  • やさしくとろけるケンちゃん - 画像
  • HMD京都2011を振り返る - 「ホームムービーの日in京都」公式ブログ(2011年10月27日付)

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